今井 重幸(いまい しげゆき)
昭和21年より独学で作曲をはじめ、交響詩「狂人の幻影」が縁となり、伊福部昭に入門。のちエドガー・ヴァレーズに師事した。
昭和28年NHKテレビの開局にともない、影絵・人形劇の制作スタッフとして参加し、「蜘蛛の糸」「杜子春」「走れメロス」などの劇伴音楽を作曲。
また、まんじ敏幸の名で舞台演出家としても活動し、30年舞台に関連する若い芸術家たちとともに現代舞台芸術協会を設立、企画と演出担当として既成の概念にとらわれない新しい舞台芸術の創造に尽くし、パントマイムのヨネヤマ・ママコ、舞踏の土方巽(その芸名の命名者であり、彼が創始した“舞踏”の名付け親でもある)、モダンダンスの三条万里子らを世に送り出した。
以後、作曲家としては横山はるひバレエ団の「ピノキオ」、江口・宮舞踊団の「蜘蛛の糸」、大野一雄・花柳照奈の「一角獣」、土方の「埴輪の舞」、旗野恵美舞踊団の「二十世紀哀歌」、伏屋順二舞踊団の「オイディプス」、三条万里子バレエ団の「禅に基づく三章」といった多くの舞踊曲を手がけ、東京芸術座、ソシエテ・デ・ザール、青俳、文学座、人間座、薔薇座、アルス・ノーヴァなどの劇団に楽曲を提供。
演出家としてもカフカの「審判」やイオネスコの「授業」などの日本初演をはじめとして、創作劇からフラメンコまで多方面にわたって活動する。
演劇の企画・プロデュースも行い、長嶺ヤス子による55年の芸術祭賞大賞受賞作「娘道成寺」や、58年の「曼荼羅」などをてがける。
平成14年師・伊福部の米寿のお祝いに「オーケストラの為の〈悠久の舞〉」を作曲、その記念演奏会において自身の指揮、新交響楽団演奏により初演。翌15年には自身の企画・演出・音楽構成による回顧展コンサートが開催された。
他の作品に「交響曲 Sinfonia」「オーケストラの為のMetamorfosi Concertante」「邦楽合奏の為の〈傀儡曼荼羅〉」「斜箭提陽」「“草迷宮”のイメージに拠る詩的断章」「マリンバとパーカッションとオーケストラの為の協奏的変容〈沖縄〉」、映画音楽に前田憲二監督「おきなわ戦の図・命どう宝」「繪金」「神々の履歴書」「恨・芸能曼荼羅」「百萬人の身世打鈴」「原色に白を求める画家・呉炳学の宇宙」、亀井文夫監督「生物みなトモダチ・パート2教育篇」などがある。
▲小杉太一郎氏撮影の20代の今井重幸氏のポートレート