作曲 雑感
あとがき
作曲法について語ることを長く考えて来ました。それを公表することについてどんな意味があるのかは分かりません。恐らく無意味かもしれません。しかし私自身の素朴な興味で言葉にしてみたのでした。どうしても特定の作家や詩人の言葉に固執してしまうのには仕方のない諦めがあります。
作曲の方法は様々です。一つだけに限定する事は不可能です。同じ学校に居たとしても、同じ師匠に師事したとしても、それは違ったものであると考えております。
恐らくは、作家は自身の手法を隠したいとか、お茶を濁したいと考えるものです。企業秘密ですから。過去の作曲家で作曲法を詳らかに書き記した人物は少ないです。メシアンは「我が音楽語法」として、その概要を語りました。ストラヴィンスキーは『音楽の詩法』で彼の奥秘に触れております。伊福部昭は『完本管絃楽法』でそれを科学と楽器法に隠喩して語りました。武満徹は散文で語りました。一方では語らなかったり、記さなかったりした作曲家の方が圧倒的な数です。そう、語らなくても良い事でした。ヴァレリーが予言した「最高の作品とはその秘密を最も長く保ち続ける作品」であるはずですから。
2009年12月 石丸基司
参考文献
「老子」 新釈漢文大系 老子/荘子 上 明治書院 1966
「楽書」史記 司馬遷 中国の古典シリーズ1 平凡社 1972
「韓非子」新釈漢文大系 上下巻 明治書院 1970
「歌論集」 日本古典文学全集 小学館 1975
「花伝書」世阿弥、「去来抄」芭蕉 能楽論集俳論集 日本古典文学全集小学館 1973
「小説作法」荷風全集第14巻 永井荷風 岩波書店 1963
「日本の芸術論」安田章生 創元選書262 東京創元社 1957
「世界の詩論」窪田般彌・新倉俊一編 青土社 1994
「茶懐石事典」 辻嘉一 柴田書店 1981
「魯山人著作集」 北大路魯山人/平野雅章編 五月書房 1997
「随園食単」袁枚 中山時子監訳 柴田書店 1980
「雨の木」を聴く女たち 大江健三郎 新潮社 1986
「雪国」川端康成 岩波書店 2003
「浅草紅団」川端康成 講談社 1996
「千羽鶴」川端康成 新潮社 1989
「砂の女」安部公房 新潮社 1981
「春の雪」三島由紀夫 新潮社 1977
「映画の話」 佐々木能理男 成城國文学会編市ヶ谷出版社 1959
「映画と音楽」 掛下慶吉 新興音楽出版社 1952
「定本宮城道雄全集」 東京美術 1972
「文学論」 ポール・ヴァレリー/堀口大学訳 第一書房 1948
「ヴァレリー全集」 筑摩書房 1973
「ヴァレリー全集カイエ篇」 筑摩書房 1980
「ショーペンハウアー全集」 白水社 1947
「芸術論」〈古典主義について、影響について〉A・ジッド/河上徹太郎訳 第一書房 1939
「贋金つくり」ジイド全集 新潮社 1950
「諸芸術の体系」 アラン/桑原武夫訳 岩波書店 1978
「精神と情熱に関する八十一章」 アラン/小林秀雄訳 創元社 1940
「オスカー・ワイルド全集」 西村孝次訳 青土社 1980~89
「手帖」サン・テグジュペリ著作集 みすず書房 1966
「詩作の哲理」ポオ全集 東京創元社 1970
「ポオ全集」 谷崎精二訳 春秋社 1969
「美味礼讃」ブリア・サヴァラン/関根秀雄訳 岩波書店 2005
「雄鶏とアルルカン 音楽をめぐる雑考」J・コクトー/大田黒元雄訳 第一書房 1928
「エリック・サティ」コクトー/安口安吾、佐藤朔訳 深夜叢書社 1976
「ジャン・コクトー全集」 堀口大学監修 東京創元社 1984
「ロダンの言葉」 ポール・グゼル/古川達雄訳 二見書房 1964
「戲曲の技巧」G・フライターク/島村民藏訳 岩波文庫 1949
「モンタージュ」エイゼンシュテイン全集 キネマ旬報社 1984
「映画論」エイゼンシュテイン/袋一平訳 三笠書房 1952
「罪と罰」ドストエフスキー/米川正夫訳 角川書店 2008
[音楽関連書物]
「声無哀楽論」 石黒健一訳 シンフォニア 1998
「音楽美論」 E・ハンスリック/田村寛貞訳 音楽之友社 1951
「ラヴェル その素顔と音楽論」ローザンタール/伊藤制子訳 春秋社 1998
「音楽とは何か(Poetics of Music)」ストラヴィンスキー/佐藤浩訳 ダヴィッド社 1949
「我が音楽語法」オリビエ・メシアン/平尾貴四男訳 教育出版社 1954
「ハチャトゥリアン」 ティグラノフ/宮下トモ子訳 新読書社 1996
「一音楽家の思ひ出」チャイコフスキィ/堀内明訳 角川書店 1950
「わが音楽の生涯」リムスキーコルサコフ/服部龍太郎訳 音楽之友社 1952
「音楽と詩の限界」A・アンブロース/辻荘一訳 音楽之友社 1952
「ベルリオーズ回想録」ベルリオーズ/清水修訳 音楽之友社 1952
「音楽家の自画像」ダリウス・ミヨー/別宮貞雄訳 東京創元社 1957
「音楽論」アルチュール・オネゲル/塚谷晃弘訳 昭森社 1961
「わたしは作曲家である」 アルチュール・オネゲル/吉田秀和訳 音楽之友社 1970
「音楽の形式」 ライヒテントリット/橋本清司訳 音楽之友社 1955
「管弦楽法」 W・ピストン/戸田邦雄訳 音楽之友社 1967
「楽器編成応用概論」 H・ビュッセル/池内友次郎訳 教育出版 1953
「近代管絃楽法」 M・ビドール/塚谷晃弘訳 全音楽譜
「近代和声の説明と応用」 A・イーグルフィールド・ハル/小松清訳 創元社 1952
「作曲提要」 H・ビュッセル/池内友次郎訳 教育出版 1953
「作曲法講議」 ヴァンサン・ダンディ/池内友次郎訳 教育出版 1953
「新訂 近代和声学」 松平頼則 音楽之友社 1955
「和声の変遷」 Ch・ケックラン/清水修訳 音楽之友社 1962
「完本管絃楽法」 伊福部昭 音楽之友社 2008
「音楽入門」伊福部昭 全音楽譜出版社 1951/2003
MUSIC NOTATION Gerdner Read Victor Gollancz LTD London、
THE NORTON MANUAL OF MUSIC NOTATION G.Heussenstamm Norton 1987
THE ART OF MUSICENGRAVING & PROCESSING T.Ross Hansen House 1987
MUSICAL HANDWRITING A.Jacob Oxford 1937
THE STUDY OF ORCHESTRATION S.Adler Norton 1982
ORCHESTRATION C.Forsyth Macmillan 1935
PRINCIPLES OF ORCHESTRATION Rimsky Russe de Musique 1922/Dover 1964
作曲雑感 了